美味しいお茶を飲むために
何不自由のない空間で、品種にこだわり水にこだわり、お菓子との相性をつきつめていくお茶側のお話の前に。
高温多湿の日本で生まれた日本茶、緑茶の美味しい召し上がり方を、飲み手の身体的なコンディション的観点からご提案いたします。
『美味しいお茶を飲むため』の索引
飲む側の体調管理
美味しいお茶を味わっていただくために、お茶の品種の御話だとか、水のお話、他のお菓子との相性などについてこれから話していきます。
その前に、お茶を美味しく召し上がっていただくのに、最も重要な要素はなんでしょうか。
当たり前の話ではありますが、飲む人の健康状態。コンディションが大切です。
戦国時代、天下を獲った秀吉と三成の「三献茶」の逸話[1]は有名ですね。
鷹狩りの帰りに秀吉が立ち寄った観音寺でのこと。疲れて咽の渇いた秀吉に対して、当時寺付きの小姓であった三成は、
- 最初は大きなお椀にぬるめの湯でお茶を入れた。
- 二杯目は小さめのお椀にやや熱めのお茶を入れた。
- そして最後の三杯目は、小さなお椀に熱々のお茶を少しだけ入れてきた。
秀吉はその対応に感服して、その小姓後の三成を召し抱えた、とのこと。
戦国時代は今よりもずっと気候が乾いていた、という説もあるそうですが日本の夏は蒸し暑いですよね。
汗びっしょりになって
高温多湿の日本の気候の中で農作業とまではいわなくても、外に出て労働をすると汗びっしょりになります。
庭の草むしり程度の作業でも、土いきれ、草いきれに包まれ、小一時間もすれば背中の下着がじっとり。
手ぬぐいで汗をふきふき、草を抜きます。梅雨時なら油断して二週間も放置すれば、きれいにした庭でもすぐに草がぼうぼうと生えてきますね。
悪態をつきながら半時も草むしりをすれば、もう休憩を取りたくなります。
失われた水分を補給しよう。体を癒そうとするとき、真っ先に頭に浮かぶのは、急須でいれたさっぱりとしたぬるめの緑茶ではないでしょうか。
今は少なくなってしまいましたが、縁側に座りながら軒下の日陰でいただく一杯のお茶。
これが格別においしいのです。
特に品種にこだわらなくても、やぶきたの安価なティーバックのブレンド茶で充分かも知れません。
美味しいお茶を飲みたい。
そう思ったとき、冷房暖房の効いた何一つ不自由のない空間に居ながらにして、お茶の品種を選択し水にこだわって究極の美味しさをお茶側に求めるのもよし。
一方、自分の体をいじめながら農作業で一汗かき、水分補給の休憩時間に淹れる一杯のお茶に美味しさを求める、という方向性もあるのではないでしょうか。
高温多湿の気候の中、汗みずくになって作業して手ぬぐいで汗をぬぐいながら、ややぬるめの煎茶をぐいっと一杯。
そこには品質の善し悪しを超えたような、日本で飲む緑茶の魅力が詰まっているはずです。
お問い合わせ
みなさまからのご質問をお待ちしています。
- 合わせて読みたい「お茶を美味しくいただくために」シリーズ
- 不思議な飲み物、その名はお茶
- お茶の全体図:『ウーロン茶や紅茶との比較』『茶ではない茶』
———-
1. 江戸時代に書かれた「武将感状記」という逸話が原本なので、信憑性は薄いのかも知れないですが、若かりし頃の三成の人柄がよく描写されています。