不定期コラム「お茶の仕入れの話」その3
値付け
ここからをしていくのですが、約20年お茶の仕入れに携わってきて、ようやく理解できたことは、
美味しい=高値ではないこと。
荒茶取引は特殊であることには違いはないのですが、大きな枠組みで言えば、需要と供給が値段を決める市場であることには違いありません。ですから生産量が少ない場合は高値になるし、生産量が多ければ安値になります。需要が旺盛であれば高値になるし、需要が不振であれば安値になります。していないことに気が付かないといけません。
品質と値段は必ずしも比例しません!
もちろん、品質が値段に与える影響はありますが、需給という大きな価格形成があり、そのあとに品質による付加価値が乗るということを理解しなければなりません。プロとしては、需給バランスを意識しながら、品質の価値と値段を見極めていくことを徹底するだけです。良いお茶を良い値段で提供するために、そのために審査をして見極めているのです。
荒茶の審査を磨くことと需給の判断が出来るようになることで、ある程度の仕入れが出来るようになります。
ここ最近の私の荒茶の仕入れの変化について書こうと思います。
【今までは】茶樹の育成方法や荒茶に加工する工程も優れているから荒茶の品質が良いという認識で、生産方法や製造過程よりも、出来上がった荒茶の品質のみで仕入れをしてきました。
極論、茶畑に行かなくても、品質の良い荒茶の仕入れが出来ると考えていましたし、品質に対する意見や価格を交渉することに、生産農家と近くなりすぎては意見を言い辛くなるとさえ思っていました。生産農家の役割と問屋の役割を区別する分業的な考え方で、品質の良い荒茶を作るのは生産農家の役割で、私は、その中から良いものを探し選ぶのが役割だと思っていました。
しかし、長期に及ぶ茶業の低迷で、荒茶価格も下落の一途をたどり、茶の生産農家を辞める人が後を絶たない状況です。最初に品質と価格は比例関係では無いと書いた理由は、品質向上の努力してきた生産農家の荒茶の値段を見ているからです。品質向上に努めてきたから、こんな現状でもなんとか成り立っているとも言えなくはないですが、続けられる生産農家も年々減っていくと思います。
【今必要なのは】不均衡な市場での取引を続けていくことではなく、生産農家と手を取り合って、お互いの持っている武器を生かす関係を構築することが、持続可能で安定的な供給と高品質が維持できる荒茶の作り方ではなかろうかと挑戦しています。
最後に、せっかく、日本一の茶の生産地に会社を構えているのに、一番根っこのお茶の栽培に今まで関わってこなかったのはもったいなかった。
土壌で味が全然違うって面白いですよ。