不定期コラム「お茶の仕入れの話」その2

問屋の仕入れについて

前置きが長かったですが、荒茶(原石)がいかに味に大きく作用するかはお判りいただけたと思います。我々にとって一番の重要な仕事は良い荒茶を仕入れることです。

この良い荒茶を仕入れる方法は、企業秘密といっても差し支えないのかもしれないが、今回書こうと思った理由は、自分が持つ知識や経験などを会社で共有できるようにするための知識共有のつもりです。

すべての暗黙知を形式知に出来る訳ではないだろうし、やり方や考え方もこの先いくらでも変わるのだろうけど、そういったことを含めて伝えればいいと思っています。

まずは、荒茶を見る前に最低限の知識を身に付けること。見ながらでも良し悪しの目利きは身に付いていくけれども、お茶のことがある程度わかっていた方が身に付くスピードは速い。
最低限の知識とは、

  • 茶樹の特性
  • 荒茶製造工程
  • 仕上げ・火入れの製造工程

のことを指します。

荒茶を見る

見ることとは、眺めるのではなく、荒茶の手触り、葉の色艶、蒸しの深度、抽出液の色、匂い、味。

抽出液は、出したてと時間を置いた後での変化も確認する事。

荒茶を熱湯に浸すことで、その茶葉が持っている内質の欠点を浮かび上がらせて判断する“拝見”という審査方法が有ります。この審査方法は欠点審査で、欠点には荒茶製造時の失敗と生葉の内質によるものとがあります。

製造時の欠点とは、

  • ムラ蒸け
  • 燻り
  • 軽度発酵

などがあり、主に香に異変を感じる欠点が多いです。

生葉の内質による欠点は、

  • 苦みが強い
  • 渋みが刺す
  • 甘みが薄い

などの味に異変を感じる欠点が多いです。一見欠点が見当たらない荒茶であっても、熱湯に浸した後に、すぐ色が赤く変色してしまう場合はなにかしらの欠点を抱えているので、浸したお湯の色を後で確認することも重要です。

荒茶の匂いを確認する時に、網で茶葉をすくって匂いを確認するのですが、匂いだけでなく、湯で戻った葉の色や、葉の中に赤く変色した部分が無いかを確認する事も重要です。このようにして、欠点の無い荒茶を探していきます。

ここで満足して荒茶の購入に至ってしまう問屋も多いのですが、欠点審査だけだと荒茶の持っている本当の良さには到達できません。そこで、

拝見審査で合格した荒茶に急須審査することによって長所を見つけていきます

お茶は飲み物ですから、最後は飲んで判断することが大切です。飲むことによって、味の広がり方、余韻、香りの抜け方など欠点審査では見えなかった長所が見つかってきます。長くなってしましましたが、まとめると、荒茶審査は2回しましょう。

  • 欠点審査でスクリーニング
  • 利点審査で長所を見つける

ということです。

この審査を毎茶期ごと行います。茶期を通して同一の生産家は毎日審査をして時系列で変化を感じたほうが良いです。通しで見ることによって、一番美味しい摘採タイミングの荒茶を見つけやすくなります。

慣れてくると生産者だけで判断をしてしまいがちになります。時々は目隠し審査を行い、先入観なく荒茶を審査しましょう。ここまでが仕入れの審査の仕方です。

投稿日: 2022年11月26日

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